非対称三角尺度法

本サイトは,非対称三角尺度法(asymmetric triangulation scaling, ATRISCAL)の紹介ページです.非対称三角尺度法は,テストデータにおける項目間従属関係を視覚化するために開発された多次元尺度法(multidimensional scaling, MDS)1つです.

簡単なご紹介 PPT

現在,テストデータを分析する手法で,もっともよく用いられている項目反応理論(item response theory, IRT)です.IRTは,非常によくできた完成度の高い理論です.しかし,すべての統計モデルは,データから情報抽出するうえで,その統計モデルがもつ内部機序にしたがって,そのメカニズムに沿う情報はシステマチックに抽象するが,残りの情報は捨象するという特徴を持ちます.したがって,IRTばかりを用いていると,テストデータからの情報抽出が一面的になります.月を研究するのに天体望遠鏡ばかり覗いていると,月の表面についてよくわかるということが繰り返されるだけです.

非対称三角尺度法は,IRTが比較的得意としていない(目的としていない)項目間の従属構造を探索する手法として開発しました.本手法は,まだまだ未成熟の手法であり,学会等で十分に吟味されていません.学会や研究会もそうそう頻繁にあるわけではないので,本サイトをウェブ公開することで,みなさまのご批判をいただきたいと思い,本サイトを開設いたしました.

非対称三角尺度法の分析対象は,項目間の条件付き正答率行列です.この行列のij要素は,項目iに正答した下での項目jに対する正答率P(j|i)=P(i,j)/P(i)です.ここで,P(i,j)は項目iと項目jの同時正答率,P(i)は項目iの正答率です.P(j|i)が大きいとき,項目jに正答するうえで項目iの知識が前提となっている可能性が高いです.P(j|i)は,一般的にはP(i|j)とならないので,この行列は非対称です.また,この行列の対角要素は,すべて1.0です(P(j|j)=P(j,j)/P(j)=P(j)/P(j)=1.0).